このワインの桜ラベルにはニューサウスウェールズ州・カウラ地区の深い歴史と関わっています。1944年、第二次世界大戦中カウラの地で捕虜になっていた日本兵約1000人余りが大脱走を企て200名以上もの死者を出した事件がありました。
脱走当時、捕虜たちが手にしていたものは、野球のバットや木の棒、フォークやナイフなど。彼らの胸中には、生きてこの地上に残る意思がなかったのです。
「生きるためではなく、死ぬための脱走。」敵につかまるぐらいなら自決しろという、大変厳しい教えのなか大脱走を実行しました。
史上最大の捕虜脱走事件は、オーストラリアと日本の両国政府によって長く隠蔽され続け、事件が公式に語られるようになったのは、事件から40年も経った1984年のことでした。
カウラの人々は事件で命を落としてしまった日本兵を手厚く葬り、日本との友好関係を深めるために本格的な日本庭園や日本文化センターを作りました。さらには日本人墓地から日本庭園までの5kmの間に約2000本の桜を植え、毎年桜祭り(10月頃)が行われるようになったのです。
国際理解を象徴する並木道としての桜。この桜をモチーフにしたのがサクラ・シラーズのラベルです。平和への誓いを改めて胸にしながら飲みたい1本です。
ウインダウリー・エステートはカウラ地区初のワイナリーとして大成功をおさめ、現在は家族全員がワイナリーの運営に携わり、4人の兄妹がワイナリーの軸となっています。
やや温暖な気候で、風通しが良く、ブドウは年間を通して充分な日射量を得て完熟します。栽培はできる限り自然な形で行うため、殺虫剤は一切使用しません。土壌は、赤粘土ロームの上に赤土ロームという土壌から、鉄鉱石の上に茶系砂粘土ロームという土壌まで様々で、600haもの広大な土壌には、最適な品種を植樹し、ブドウの品質、個性を大事にしたキャノピー・マネージメントが行なわれます。
熟したベリー。コヒービーンズやバニラの香り。味わいはリッチなベリー類、リコリスのニュアンス。よく熟した豊かなタンニンが力強さを加えています。
使用されるブドウは収量を抑え、またその中でも選りすぐられた一部のブドウのみ使用されています。